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2005年07月16日

★「でんひゃ」

先週末は、子供が胃腸風邪に伴う高熱によって「熱性けいれん」を引き起こし、執筆どころではありませんでした。

先週の土曜、夕方の4時ごろでしたか。
先日から続いていた熱が、40度近くまであがったな、と思っていたら、突然寝ていた子供が両手を突っ張って体を震わせはじめたのです。
白目を剥き、口から泡を吐き出しはじめました。

私が手を伸ばそうとすると、妻が「待って」と制し、時間をはかりはじめます。2分半近くで痙攣は小康状態になりましたが、そのあいだ私たちは眺めていることしかできませんでした。激しい不安が血管を通って体じゅうを駆け巡っていきました。

痙攣がおさまると、子供はうつろな目をしたまま泣きはじめます。泣き方が尋常ではありません。激しく泣く、というより、小さな体のどこかに侵入した異物を吐き出そうとするかのように嗚咽を繰り返し、泣くのです。抱きかかえてもそっくり返って、何かから逃れよう、逃れようとします。

妻が元保育士であった友人に電話をかけ、相談しました。
助言をもとに、躊躇することなく病院へ行こうと決めました。


土曜の夕方は、名古屋も土砂降りの雨が降っていました。土曜でもやっている子供クリニックを教えてもらい、車を飛ばしました。
もともと車の運転が得意ではない私が、こんな悪条件のなか車を走らせるのは危険すぎました。それでも、「一秒でもはやく」という思いで、次から次へと車を強引に抜かし、黄色信号でも無視して車を駆りました。

後部座席に座った妻は、子供を抱えながらずっとオロオロしています。

「どうしよう、過呼吸になりかけてるよっ」

信号が赤になって車を停車させたとき、振り返ってみると、子供は宙を掴むかのように両手を広げ、指先を鷲のようにして突っ張らせ、体を震わせていました。

後ろからクラクションが鳴らされます。私は車を急発進させましたが、激しい雨のせいで、フロントガラスを通して映る車道の水溜りに気づきません。
スリップしかけるのを何とか持ちこたえ、路上駐車している車の脇をすり抜けながら、車を走らせました。

後部座席から聞こえてくる子供の泣き声は、激しくなったり、弱弱しくなったりしました。

いつもは、くどいほど「安全運転して」と言う妻が何も言いません。焦りが募っていくばかりでした。


子供クリニックに横付けし、車からいったん出て後部座席のドアを開くまでの短いあいだで、私は全身びしょ濡れになりました。
それほど雨は強く、激しかったと思い出します。


子供はまだ泣きつづけています。
3人、濡れながらクリニックに飛び込み、「何とかしてください!」と叫びます。
受付の人が、「まずアンケートを書いてください」と言うので、

「アンケートなど書いてる場合か、バカやろぉ!」

と言うのをグッとこらえ、用紙を受け取っていると、すぐに別の看護士が飛んできて優先的に診察をさせていただきました。

診察の結果、「熱性けいれん」でしょうと言われました。
その後、一時間、点滴をしてもらいましたが、子供はずっと弱弱しく泣いています。
本人も、突然の体の変調に激しい恐怖を覚えているのでしょう。
小さな手に突き刺さった点滴の針が痛々しく見えました。

「念のために大きな病院へ行ったほうがいいでしょう。髄膜炎や脳炎の可能性もゼロではないので」

クリニックの先生にこう言われました。私たちは悩んだ末、その足で日赤病院へ走りました。
雨はすでに小降りに変わっていました。

病院に到着したのが夕方6時45分です。

大きな病院ではあるものの救急外来であるなら、そんなに待たされることないだろう、せいぜい30分ぐらいか。もし1時間も待たされるようなことがあれば、子供が不憫で仕方がない、しかしまず、そんなことはないだろう。そういう気持ちで病院へ行きました。


ところが、です。


前述したとおり6時45分に受け付けをしてもらったにもかかわらず、最初に診察を受けたのが夜の10時半ごろでした。なおかつ小児科の先生に診察してもらえたのが、さらに30分ぐらいしてからのことでした。

40度近い熱を出している子供を抱え、私たちは4時間近く、薄暗い救急外来の待合室で待ったのでした。

はじめから4時間待て、と言われれば覚悟もできます。
しかし、いつ呼ばれるかわからない状態のままに過ぎた4時間は、途方もないほど長く感じられました。

妻と交代で、子供を抱きました。
椅子におろそうとすると、泣きじゃくります。泣けば、同じように数時間も待っている患者さんやその家族に悪く、何度も外に行ってあやしました。

最近、ようやく覚えた言葉「電車」を、うなされながら口にするときは涙が出そうになりました。


「でんひゃ」

「でんひゃ」

「でんひゃ……」



子供の体は、信じられないほどに熱かったです。
これが人間の体から発せられる熱なのか、と思えるほど非常識な熱でした。

私たちの子供よりも緊急性の高そうな容態の人も、ぐったりと椅子に横たわったまま数時間を過ごされていました。
私たちだけが、このように辛いわけではないとはわかってはいても、不安と不満は時間の経過とともに募り、激しい疲労へと形を変えて体にのしかかってきました。


結局、診察してもらっても「もう少し様子をみましょう」といわれただけだったのは、よかったと書けばいいのか、拍子抜けしたと書けばいいのか……。
このまま熱がひけば、ただの「熱性けいれん」でしょう。そんなに珍しいことではない。だいたいはじめての子だと、あなたたちのように慌てるものです。そう言われました。

帰宅したのは、夜中の12時前でした。妻も私も、気力・体力ともに限界に達しようとしていました。


翌日の日曜も、子供の熱は下がりません。

二人で不安な一日を送りました。そんななかで、妻の友人からたくさん励ましの言葉が届きました。

とりわけ、こっそり我が家のアパートへ寄り、子供の熱を冷やすための特別なグッズや食事を届けたくれた元保育士の方には感謝の言葉もありません。

妻と私二人は、その優しさに触れ、無言で涙ぐみました。



あれから一週間がたちました。

子供はすこしずつ回復しています。
ただ、まだ疲れやすいようで、公園へ行っても歩きたがろうとしません。

昨日私は、久しぶりに終電まで仕事をしました。
今週一週間、子供と触れ合う時間が少なかった私は、この3連休、妻と子供と3人で、のんびり過ごせたらと考えています。


執筆に対する意欲も徐々に回復しつつあり、子供が昼寝しているあいだを見計らって、シグマリオンを取り出し、こまめに書いていこうと思っています。

だからこそ、コンパクトフラッシュが壊れたせいで発生した「手戻り」は大きかったです。(く〜。。。)



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Posted by rampo2006 at 13:40