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2005年05月18日

★私は江戸川乱歩賞をとることができる。

人間ドッグを受診した月曜日の夕方、日本を代表する経営コンサルタントが、私を訪ねてきた。


プロットの風景

プロットを印刷して推敲しているところ。2アップ印刷しても36ページあった。
(本文とはまったく関係がありません)










どれぐらいその方が有名かというと、とあるビジネスマンが競い合う世界大会で大賞を受賞し、経営コンサルタントとして独立してからは、メルマガを発行すれば4万人以上の読者がつき、書籍を出せば毎回10万部ぐらいは軽く売れちゃうというぐらいの有名人だ。

コンサルを引き受ける顧問先は全国に数百社。

断っても断っても、中小企業の社長が「ぜひ先生の話をお聞かせてください! どうか! お願いですよぉ!」と、泣いてすがってきて離れなくて困っちゃうな、もう〜と嘆いてるような人だ。

「気に入った仕事以外は絶対やらない。イヤな仕事を引き受けなくたって、もう十分儲かっちゃってるから」と公言して憚らないタフなハートを持っている。

(ここまで書けば、わかる人も多いだろう)


そんな方が、いくら「ついで」とはいえ私を訪ねてきたのである。
これは事件だ。


昼過ぎ、その方の秘書から電話がかかってきたとき、私は人間ドッグで2度も飲まされたバリウムと昼に食べたとんこつラーメンとのせいで苦しんでいた。

「夜に名古屋で講演会があるので、それまでの1時間ぐらい空いてますか」と聞かれ、私は即答できなかった。

会ってもいいけど、全国区のトップコンサルタントを前にして何を話せばいいのかわからないからだ。そんな度量、私にはない。


「(私なんかに)どんな用件でしょうか」

おそるおそる聞いてみた。しかしアシスタントの方はわからないと繰り返す。


私ひとりでは恐ろしい……イヤ、心細いので、上司はもちろんのこと社長にも同席を頼んだ。

「あの先生が来るんだったら、●●さんにも声をかけよう。いや●●さんも紹介したいな」

しばらく社内が騒がしくなった。


それからは、そのトップコンサルタントが来る5時半まで、私はそわそわしながら仕事をしていた。

もう一度東京の事務所へ電話してアシスタントをつかまえ、「本当に何しに来られるんでしょうか」と聞いてみたりしたが、「さあ」としか答えてくれない。

おかげさまで仕事は多く、電話応対もいくつかこなしていたが、5時半までの時間は、やたら長く感じられた。


……ところがである。


なんとその方は、予想外にはやく到着されてしまったようで5時に応接室に通されたと内線が入った。

社長や上司も会議に入っていてすぐには同席できない。

仕方なく、私は一人で応接室に入り、神田正則や金森重樹と肩を並べるとも言われるトップコンサルタントと相対した。


だが、
私は覚悟を決めると強い。

「なるようになれ」と思いながら、その方と45分ほど会話した。

ビジネス上、接点があるから会話もできる。しかし、さすがに緊張した。気さくに話しかけてくれているが、ボロが出れば二度と相手にしてもらえないと思うと、朝に飲んだバリウムがこみ上げてきそうだった。


社長や上司が、会議を終えて応接室についても、彼は私と接する態度と同様に気さくだ。まだ年齢は40歳そこそこで、私と4歳か5歳しか変わらない。

着ているスーツは明らかに高級だった、腕にしていた時計もフランクミューラーだったから、数十万円もするようなスーツだろう。(フランクミューラーが100万や200万はくだらないのだから間違いない)

それに引き換え、私はヨレヨレのスーツを身にまとっていた。

特にその日は、人間ドッグだったため私が持っているスーツのなかでも、「捨てようかどうか迷うレベル」のスーツを敢えて選んで着ていった。

比較するつもりはないが、なんとなく惨めな気持ちでいた。


しかしナゼだろうか、講演会の時間が近くなってエレベーターまで見送りにいくとき、うちの社長に向かって「彼が優秀だから、ついつい会いにきちゃうんだよね」と私を指差して言ったのだ。

このセリフには、社長も驚いたようで返答に窮していた。

私も一階まで見送りにいって、「また来るよ」と肩をたたかれたときはぼうっとしてしまった。
なんで私を「優秀だ」と言ったのだろう。

そんなはずはないのに……。




昨年の今ごろ、後先考えずに大企業を辞職して、毎日子供を公園に連れて行きながらボーっと過ごす毎日を送っていた。

あのころ、仕事どころか執筆もほとんどしていなかった。ブログの「ブ」の字も知らなかったし、図書館に通って興味ある本を読んだりして過ごしていただけのフーテン崩れだった。

昨年7月に今の会社に拾われ、現在にいたっているというのに、全国の社長が会いたくてもなかなか会えないコンサルタントから「この人、優秀だよ」なんて言ってもらえた。しかしそんな人間ではない。そのことだけは確かなのだ。

今でも真意が理解できないのだが、今考えると、実は、ひとつだけ言えることがある。


私には、どうやら、他人には負けない大きな長所――ストロングポイントがあるようなのだ。

特に昨年の再就職活動をしている際に、それは痛感した。


私が昨年、35歳という年齢で再就職活動をしたとき、転職コンサルタントの人たちはこぞって「もう賞味期限ギリギリ。選べる会社なんてほとんどないですね」と釘を刺された。

ところが蓋を開けてみるとどうだ。


面接に呼ばれると、ほとんどの会社で内定をもらった。

今の会社も、上司が面談をするとすぐに「彼だ!」と確信したようで、二日後には社長と面談まで行き、3日後には内定通知が送られてきた。

凄まじい速さで私は評価された。


ここまで書いて、わかっていただけたろうか。私のストロングポイントは何か、ということを。

要するに、私は誰に対しても「ファーストインプレッション」がいいのだ。


プライベートな場面で会う人はわからないだろうが、ビジネスの場で誰かと会うとき、私は私自身の売り込み方をよく心得ている(ようだ)。

しかも「個人面接」なんていうものは、あまりにイジワルな質問をされない限りは、相手が求める回答以上のものを言う自信がある。

なぜそんなことができるかというと、私が生粋の「ストーリーテラー」だからだ。

その場で、即興で話をつくってしまうことができるという特技を持っている。



「私は前職でこんなことをやってきました。このときは〜で、こういうことに苦労しましたね。●●と取引しているときは、〜こんなことにも携わりましたが、それはそれで充実した毎日でした」

「え? ●●に出入りしてたことがあるの? じゃあ△△って部長知ってる?」

「部長さんは存じ上げませんが、確か課長さんと何度か打ち合わせさせていただきました。確か、○○といった案件ではないでしょうか」

「でもあそこのプロジェクト、大変だったでしょう?」

「おっしゃるとおりです。仕様変更は頻繁でしたからね。グループ会社との関係も強固なものでしたから、うちは戦略案件のひとつと考えて真っ赤に染まろうとプロジェクトのキックオフまでは耐え抜きましたけれど」

「あそこは渋いからね〜」

「渋いですがその分、信頼はもてました。継続的な受注もいただけましたし、苦労したからこそ、プロジェクトが終わるころには充実感いっぱいでした。あそことお仕事ができて本当によかったと思っています」



信じられないかもしれないが、一度もかかわったことのないプロジェクトの話を、私は勝手に想像して話しまくることができる。

しかも、他社の悪口は絶対に言わない、ボロが出ないように特定できる名前も出さない、自信みなぎる表情で話す――など、自然とテクニックが身についているようで、相手が私の話すことを疑うことはほとんどない。

「口からデマカセ」を言っているように見えないところがまたいいところだ。相手は気持ちよく騙されてくれるだろう、――しかしボロが出て困るのは、当然私自身だ。

これまで何度、自分で自分自身の首を絞めてきたことか。


実際に深くかかわっていけば、私の能力がどれほどのものか周囲は理解しはじめる。

「こいつに期待した俺がバカだった」と思われたことも多いだろう。

仕事ができそうに見えてできない人間って、実はいるのだ。
私がその典型的な例だ。


だが、最近よくこんなことを思う。


「嘘から出た実(まこと)」


実力とギャップがあっても、演じきってしまえば問題はなかろう。



さて、このブログに焦点を当ててみよう。

2006年江戸川乱歩賞をめざすblog(ブログ)なんて、名前のブログを書いているが、本当にお前、乱歩賞を受賞できるぐらいのレベルがあるわけ?ってこのブログを訪れる人誰もが思っていることだろう。

……が、みなさんが期待しているような言葉は、私はここで書かない。というか、書けない。

残念ながら、私はそれだけの才能も知識も実力もないが、乱歩賞はとれるという自信がある。

私は、私自身の力量をある程度客観的に見きわめている。

ビジネスの世界での私は、「口ほどでもない」人間だが、私なら乱歩賞はとれる。


2006年にとれるかどうかは、もちろん未知数だ。
これは以前から書いているとおり、受賞には「運」と「実力」と「その他、何か目に見えないパワー」が必要だからだ。

ただ時期は未定でも、受賞の実現性は高いと思う。


私が、私自身の能力をちゃんと発揮すれば、間違いなく受賞できるのだ。


見事、乱歩賞作家となり、本も売れたら、安くても新しいスーツを購入しよう。そしてあのトップコンサルタントを私のほうから訪ねにいこうと思う。

今度はビジネスを離れるわけだから、会ってくれなくなるかもしれない。しかしそれでもいい。

作家という職業が、私の身の丈にあった仕事だと思うからだ。



【過去の関連日記】

★仕事がうまくいけばいくほど、自分との葛藤は増える。

★一年前の3月31日を思い起こす。




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Posted by rampo2006 at 06:20
この記事へのコメント
はじめまして!

すごい才能をお持ちなんですね。
私は逆に、何もないところから話を作るのが苦手です。
うらやましい…。

乱歩賞、受賞できると良いですね!
がんばってください!
Posted by ろび at 2005年05月18日 00:00
がんばって!!
自分も夢のためにがんばります。ここを覗くと、ついそう思ってしまいます。
Posted by ことぶき浩。 at 2005年05月18日 01:22
 なんかあなたがどんどんあたしのしらないあなたになってゆくう。
Posted by 白石昇 at 2005年05月18日 02:15
なんだか感動しました。
ボキャブラリーのない私なのでただただ・・・すごいですわ、じゅんさん。かっこいい。
Posted by よね at 2005年05月18日 02:33
初めまして、山嵐拓夢と申します。

・・・すごい。

解説したご自身の能力が、今この記事そのものでも発揮されていますね。
たとえこの記事の一部に創作や誇張があったとしても、
誰もそれを疑うことは無いでしょう。
(こんな言い方をしてしまいましたが、もちろん私は一切疑っていません)

溢れる自信、そしてそれを以ってして己を高みへ押し上げようという気概。
感銘を受けました。もう私はあなたが2006年江戸川乱歩賞受賞作家じゃなきゃイヤです。

私もブログでモノ書き始めました、ちょっと特殊な小説ですが・・・。
遊びに来て頂けたら嬉しいです!
Posted by 山嵐拓夢 at 2005年05月18日 11:21
フルスロットルも近いっすね。
がんがんに、ゆきましょう。
応援してくれる人の意見だけ聞いて、突っ走ろう。
世界で、こういうブログはほかにはない!
僕なんか、眼精疲労でヒイヒイ言ってるのに、
あなたは、とにかくスゴイ!!
Posted by タカ at 2005年05月18日 14:00
じゅんです。たくさんコメントをありがとうございます。

> ろびさん、はじめまして。
私をよく知る者は、「心痛めることなく真顔で作り話をする男」として警戒されています。ほどほどにしないと……。

> ことぶき浩。さん
はじめまして。夢を持っていたら、それを隠しちゃいけないと私は思うんですね。隠すってことは、どこかで夢を実現できなかったときの言い訳を手元においておきたいということだと思うからなんです。でも疲れますけどね。(笑)


> しらいっつぁん
白石さんこそ、未知数無限大。

Posted by じゅん at 2005年05月19日 10:30
> よねさん
いつも妻子ともどもお世話になっておりますっ。妻が愚痴を言ったら聞いてやってください……。


> 山嵐拓夢さん
はじめまして。かなりこだわりの強いブログをもたれているのですね。いや〜私もそこまで凝り固まることができないな。もっと推理小説を読まなきゃ。


> タカさん
そろそろプロットのほう、煮詰まってきました。あと一息と思います。
Posted by じゅん at 2005年05月19日 10:30
はじめまして。いつも楽しみに拝見させていただいてます。じゅんさんの有言実行の姿勢はすごいなと思います。実現しなければただのビッグマウスで終わってしまいますもんね。退路を断って、自分を追い込もうという覚悟が感じられます。実績を残されてきた方で、自信もあるのかもしれませんが、なかなかできることではないです。
乱歩賞の作品は好きでたくさん読んでいます。じゅんさんがもし受賞されたら必ず読みます。
がんばってください。応援しています。
Posted by ジョー at 2005年05月20日 01:13